「分野跳躍力」でこれからのデータサイエンスを生きよ(後篇) ~統計数理研究所樋口知之所長インタビュー~

      2016/10/17    - インタビュー, スキルチェック   執筆者:スキル委員菅由紀子

データサイエンティスト協会顧問でもあり、統計数理研究所の所長を努められる樋口知之先生に、お話を伺って参りました。先生ご自身の半生を振り返って頂きながら、データサイエンスへの興味の原点やこれからのデータサイエンスへの展望を前篇と後編の全2回でお届けします。

統計数理研究所 所長
樋口 知之先生

1984年 東京大学理学部地球物理学科卒業
1989年 同大学院理学系研究科博士課程修了後、統計数理研究所に入所。2011年4月より同研究所 所長。
情報・システム研究機構 理事
総合研究大学院大学統計科学専攻 教授

【アカデミアでのデータサイエンスに対する対策。日本がデータサイエンスに強くなるために】
Q.  ところで、アカデミアのデータサイエンスへの取り組みやありたき姿について先生のお考えを教えて下さい。

樋口: 今年から文部科学省でもデータサイエンスを強化する動きが出てきました。マスとしてデータサイエンスを獲得する土台ができてきたのです。4年後以降にはデータサイエンスの素養を持った大量の学生が企業に就職し始める、ということです。私は重要な学習方法の一つはPBL(Project Based Learning)だと考えています。OJTは実施が少し大変ですからね。企業側には今からPBLに適した企業内のデータやその事業ドメインのデータを提供頂き、学生に事業に興味を持ってもらう機会となり得ます。

文系の商学部や経済学部だとしても、学問的な座学はeLearningを推奨し、講義はPBLで実際のビジネスの構造や論理に触れる方が良いと思います。

インタビュー風景

インタビュー風景

こういうPBLの利点は企業側、学生側双方にあると思っています。企業側としては、ローデータでなくてもよいので、業態の癖が勉強できるデータを大学に出しておけば、ドメイン知識を早く身につけた優秀な学生にアプローチすることができるわけです。学生には実社会のデータを元に正解のない解を考え抜く、ということを早く経験してほしい、と考えています。プログラミング能力も重要ですが、答えのない問題を論理的に考える力や、人にわかりやすく伝える能力などもデータサイエンスでは大事ですからね。

PBLで色々なケースに触れ、グループでとことん話合いながらお互いを高めあってセンスを磨くことを早めに体験してほしいです。

一方、暗号技術や故障検知技術のように純粋数学に近い分野で、全く違う専門性が必要になっていることもあります。これからIoTの時代を迎え、モノづくりやリアルの世界でのデータサイエンスが益々必要となりますが、その時に専門技術や知識に優れた

 

[DS協会会員限定]この記事はデータサイエンティスト協会会員限定です。ログインするか、会員登録をお願い致します。