不動産を科学することへの興味からスタート ~株式会社おたに 小谷 祐一朗氏インタビュー~

       - インタビュー   執筆者:スキル委員 原茂

株式会社おたに 代表取締役としてご活躍されている小谷 祐一朗氏にお話をお伺いしました。
(取材日:2018年6月22日)

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小谷 祐一朗氏(略歴)
UCLA教育情報大学院 修了
現在、株式会社おたに 代表取締役。株式会社おたにが提供するサービス「GEEO」は、全国約6000万建物及び土地の価格を推定できるサービスであり、総務大臣奨励賞及びグッドデザイン賞受賞している。

Q1. 現在の主な業務内容をお聞かせください。特に、データサイエンティストとしての活動内容をお聞かせください。

現在は、モデルを組み込んだソフトウェアの開発から営業まで全方位的におこなっています。当社は、数理モデルという知的財産を扱う会社ですので、企業でデータサイエンスを行う方と比較すると、ビジネス部分についても考える機会は多いと思います。

ソフトウェア(知的財産)を固定資産として扱うことは、経済学的にみると革命的な考え方だと思っています。今後のデータサイエンティストの発展性という点では、自分でモデル化したものを固定資産として利用していくことができれば、大きな活躍ができるフィールドになると思っています。

Q2.データ活用に携わるようになったきっかけ、そこからデータサイエンティストに至るまでの歴史をお聞かせください。

父親が不動産屋を営んでおり、学部の時に、『計量経済学 (y21)』(浅野 皙, 中村 二朗, 有斐閣, 2009)にあった不動産のヘドニック推定が面白いと感じ、全国の数千万件の物件データの価格を推定することが「将来的に人生の中でやりたいことリスト」に入りました。それがデータ活用に携わるようになったきっかけです。

その時はコンピュータサイエンスに詳しくなかったので、分散コンピューティング/並列処理をどうするか考えながらしばらく放っていました。その後、留学から帰ってきて仕事している中で、“これはできそうだな”と、Rクラスターを十数台使用して実験しました。そこで実現できたのがGEEOです。

Q3.データサイエンティストとしてデータ活用に携わるには、どのようなスキルが必要だと考えますか?

まず、スキル的にいうと、正規表現などのプログラミングに対する理解は必要ですし、同時に線形代数なども必要なスキルだと思います。実際にビジネスの現場で、きれいでないデータから必要なデータを抜き出すことや、そしてそれが正しいかをチェックとしていくことを、根性を持ってやっていくことも大切です。

ただし、作業者としてのスキルレベルでは、リーダーの手足にとどまってしまいます。言い方を変えると高給取りにはなれないでしょう。やはり、物事を抽象的に考え、それを具体化(実装)できる力が必要だと思っています。

また、他者が理解できるように話をしなくていけませんから、いい意味で「弁がたつ」ことも重要です。人を納得させる能力というのは、話に起承転結をつけ、論理的にプレゼンテーションする能力であり、データサイエンティストとしてというよりも、社会人の素養というべきかもしれませんが。例えば、落語や漫才を勉強してみるのもいいでしょう。

Q4.スキルを習得するに際して、どのようなことを行われましたか?工夫したことや苦慮したことなど、何かエピソードがございましたらお聞かせください。

例えば統計の勉強では、実際に最尤法などを自分でプログラミングしてみたりするといいでしょう。私は空間データを扱うことが多いですが、“地球は丸いんだ”とか、地球は丸いのに平面に落とし込んだら“これは微妙に何か違うな”とか、実際にやってみないと実感できない気がします。

そういうことをしっかりやっておかないと、いざ、データが改ざんされた、とか、乱数の違いが結果の違いを生んでいるのか、とか、そういうことがわからなくなってしまいます。他にもビッグデータを扱ったときに、ライブラリがボトルネックになったら解決できずに詰まってしまう可能性もありますよね。ですから自分で実際にやってみることが大事です。1回目ではわからなかったものが、2回、3回と繰り返すうちにわかってくるというのがあるので、一定期間しっかり自分で勉強して理解することが必要でしょう。

また、データサイエンティストが思考方法を学ぶには、ロースクールのソクラテス・メソッドを参考にしてもよいと思います。設計したモデルの問題点を見定め、それに対する妥当性をもった答えを用意することを繰り返し、考えを整理していくという点に合っている気がしています。

Q5.ご自身の活動の今後の発展性/方向性/新たなチャレンジなどがございましたらお聞かせください。

改めて考えたい分野は“地球と地図”です。近年、地球の捉え方が徐々に変わってきつつあるなと。それは、紙から画面デバイスへの変化によるものなのか、紙という静的なものと動的なものとの違いによるものなのか。また、そこに対して、扁平とか曲率がどのように関わってくるのか、地球と地図は図形として一緒に扱えるものなのか、ということを考えたいと思っています。構想はしていますが、理論はこれからです。

Q6.最後に、データサイエンティストを目指す方(見習いや独り立ち)に高めて欲しいスキルやマインド、その他メッセージがございましたらお願いします。

線形代数が当たり前にでき、プログラミングもできるというのが当たり前だと考えて、その上で、そこから積み上げていってほしいなと思います。その中には、デザインとか民法とか様々な領域が含まれます。デザインというとビジュアルデザインを思い浮かべるかもしれませんが、実際にデータを触りながら何ができるかをデザインしていくというマインドセット、デザインシンキングを身に付けて欲しいと思います。

あとは、データを見続けても疲れない精神力を身に付けて欲しいですね。突き詰めて考えるのは必要なことだと思っています。ゼロイチのデータから、これは何を意味しているのかを考えていくというのは、基本ですが実は難しい部分です。生成されたデータについてストーリー立てて考えるとか、そのストーリーがあっているかどうかを検証するとか、そのストーリーが学術の視点ではダメだが、ビジネスの視点ではどうかとか、目的に応じてデータを見続けて、データを扱える能力をつけていって欲しいです。

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(取材日:2018年6月22日)

■編集後記■

データサイエンスでビジネスをする小谷様から、スキルチェックリストにあるような様々なスキルがどのように活用されているかを具体的にお聞きできとても勉強になりました。また、「データを見続けられる精神力を鍛える」というお言葉に、改めてとても納得するところがありました。(スキル委員:高橋)

不動産価格の件は、非常に興味深く聞かせて頂きました。話に起承転結をつけるために落語や漫才を勉強するという勉強法は納得感があり、さっそく実践してみようと思います。自分でプログラミングすることの重要性を痛感するインタビューでした。(スキル委員:孝忠)