2025.07.01
Data of Data Scientist シリーズ vol.68『28%-職場でスキルが活かせていると感じているデータサイエンティストの割合』
データサイエンティスト協会では、一般(個人)会員向けに毎年アンケート調査を実施しています。今回は、2024年12月に実施した最新の調査結果をもとに、データサイエンティストのスキル活用の実態とその課題について考察します。
一般(個人)会員向け2024年調査結果:https://www.datascientist.or.jp/news/n-pressrelease/post-3953/
データ活用がビジネスの現場で重要性を増すなか、多くの企業がデータサイエンティストの採用や育成に取り組んでいます[1]。また、データサイエンティストを取り巻く環境も着実に整備されつつあります[2]。しかしその一方で、現場では「スキルが活かされていない」「やりたい仕事ができない」と感じている人も少なくないようです。こうした声は、今回の調査結果にも表れており、現在の職場で「スキルが活かせている」と感じているデータサイエンティストの割合は28%にとどまっています。
スキルが活かされていない背景には、いくつかの要因が考えられます。まず、データサイエンティストに求められるスキルや役割が広範であることから、担当領域や業務範囲が多岐にわたり、結果として専門性が埋もれてしまうケースがあるかもしれません[3]。また、企業が社員のスキルを十分に把握できていないことも一因にあるでしょう。たとえば、機械学習の専門性を持つ人財が、日々の業務ではExcelでの集計やレポート作成に終始しているケースがあるかもしれません。配属や業務アサインが過去の経験や肩書きに依存し、個々の能力が活かされないままになっていることもあります。
こうした状況を改善するには、企業と個人の双方が次に挙げるようなことを意識的に取り組むことが不可欠です。企業はまず、社員のスキルを棚卸しし、可視化することから始めるべきでしょう。スキルマップを活用することで、個々のスキルに基づいた適切な業務配置や育成支援がしやすくなります。現在、メンバーシップ型やジョブ型に代わる人財マネジメントモデルとして「スキルベース組織」[4]が広がりつつあるのも、こうした課題意識に対する帰結とみることができるでしょう。
一方、個人にも自律的な姿勢が求められます。特にデータサイエンティストは、専門性が多岐にわたるため、自身のスキルを棚卸しし、得意分野や伸ばしたい領域を明確にすること[5]。そして、多様な学習機会を積極的に活用し、知識やスキルのアップデートを継続しながら、それらを実務に結びつける工夫を重ねることが重要です。さらに、ポートフォリオや1on1、社内プレゼンなどを通じて、自分のスキルを言語化し、周囲に伝えることもキャリア形成において大きな意味を持ちます。
データを活用して自社や顧客の課題を解決することは、企業の持続的な成長につながります。これを実現するためには、データサイエンティストがそのスキルを遺憾なく発揮し、価値を創出できる環境が不可欠です。したがって、データサイエンティストの適切な配置や育成機会の提供、そしてデータサイエンティスト自身による自律的なスキルのアップデートが重要となります。データサイエンティストがその力を最大限に発揮できる社会の実現に向けて、今後も協会として、調査・提言・支援活動を通じて貢献してまいります。
データサイエンティスト協会 調査・研究委員会
株式会社日立アカデミー 市塲大夢氏
[1] データサイエンティスト協会では、企業担当者向けにデータサイエンティストの採用に関するアンケート調査も行っています。https://www.datascientist.or.jp/news/n-pressrelease/post-3991/
[2] 2013年に発足した当協会は、データサイエンティストに求められるナレッジやスキルの定義、実態調査、ガバメントリレーションを含む情報発信、セミナー・トレーニング・検定プログラム等の提供、他団体との協業などを通じて、データサイエンティストを取り巻く環境を整備してきました。https://www.datascientist.or.jp/aboutus/
[3] 現時点で最新のスキル定義によれば、データサイエンティストに求められるスキルは全体で650項目に及びます。https://www.datascientist.or.jp/news/n-pressrelease/post-1757/
[4] スキルベース組織(Skill-Based Organization)とは、職務や役割を、職位や肩書きではなく「スキル」に基づいて定義・運用する組織形態のことです。個々のスキルや能力に応じて、採用・配置・育成・評価を行うことで、戦略的かつ柔軟な人財活用や社員のエンゲージメント向上が期待されています。近年では、Unilever、IBM、Googleなどのグローバル企業がスキルベースのアプローチを採用しています。一方で、スキルの定義や評価基準の整備が必要、スキルデータの更新・管理に手間がかかる、組織文化やマネジメントスタイルの変革が求められる、など課題があるのも実情です。最近では、「ジョブ型×スキルベース」のハイブリッド型を採用する企業も増えています。
[5] スキルの可視化・把握の一助としてデータサイエンティスト検定の受験も役に立つはずです。https://www.datascientist.or.jp/dscertification/
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