2025.08.27

【イマドキのデータサイエンティストに迫るvol.6 前編】

データサイエンティストの業務内容や働き方の実情を、多くの人に正しく知ってもらいたいと考え、企画を始めたインタビューシリーズ。 

第六弾は、ライオン株式会社のデジタル戦略部 データサイエンスグループのデータサイエンティスト、村上晃満(ムラカミテルミツ)さんにお話を伺います。

ライオン株式会社
村上 晃満 氏(ムラカミ テルミツ)・37歳
新卒入社・デジタル戦略部 データサイエンスグループ データサイエンティスト
データサイエンティスト歴:7年(2018年ごろから健診ビッグデータ分析に従事)

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−はじめに、自己紹介をお願いします。
村上さん: 村上晃満(ムラカミテルミツ)と申します。ライオン株式会社に2014年に新卒
で入社し、現在はデジタル戦略部のデータサイエンスグループでデータサイエンティストをしています。健診レセプトデータ分析のリーダーとしても活動しています。
もともとは研究員でしたので明確な境界があるわけではありませんが、データサイエンティストとしてのキャリアは7年ですね。入社してからは12年目で現在37歳です。

 

−以前は研究職だったのですね。データサイエンティストとしてキャリアを歩み始めた経緯を教えてください。
村上さん: 2018年、研究員だった当時に 弘前大学はセンター・オブ・イノベーション(COI)プログラムの拠点として、疾患予兆法や予防法の開発等の課題を掲げ研究活動をしていて、「健診ビッグデータ」を保有していたことから、当社としてもそのデータを活用しようという話になりました。弘前大学に常駐する形で1年半弱青森に住み、この健診データ分析に精力的に取り組みました。
そこが私にとって研究員からデータサイエンティストへの転機であり、その時点を起点としてカウントしています。


−データサイエンティストへのキャリアチェンジというのは、よくあることなのでしょうか?
村上さん:
当時としては珍しかったかもしれません。ちょうど私が弘前大学から戻ってきたタイミングで「データサイエンス室」という専任組織ができ、そこに異動することになりました。今ではいろいろな部門にデータ分析者がおり、彼らと連携を取ることもあります。
現在私が所属しているデジタル戦略部データサイエンスグループで、研究職出身なのは私を含めて2人だけです。

 

−学生時代はどのような学問を専攻していましたか?
村上さん: 出身学部はまったく情報系ではなく化学系で、大学院修士課程まで専攻し、最終的にはタンパク質の分析を行っていました。そのため、会社では「生命科学研究所」という生命系の研究所に配属されました。
いつの間にかデータ分析を担当するようになり、前述の大学への派遣やビッグデータ分析へとつながるキャリアを築いてきました。

 

−現在はどのような業務を担当されていますか?
村上さん: 現在は弘前大学の健診データではなく、ライオン社内の健診データの分析を担当しています。
また、レセプトデータを用いた医療費分析にも携わっており、つい最近、産業衛生学会で発表も行いました。
さらに最近では、データマネジメント推進業務にも携わっており、売上などのファイナンス系のデータをはじめとする、さまざまなデータの整備も担当しています。これらのデータはまだ活用しづらい状況にあるため、クラウド上にデータベース化するなど、その環境整備を進めているところです。

 

−レセプトデータというのは初めて聞いたのですが、これはどのようなものですか?
村上さん: 医療機関から提供される患者の診断、検査、治療、薬剤等に関するデータで、ここから医療費が分かります。

 

−健診データやレセプトデータの分析と活用方法についてお聞かせください。
村上さん: 当社はオーラルヘルスケアに力を入れているメーカーなので、歯科医の先生や厚生労働省などの行政関係の方々とも交流があります。
そういった交流の場面で、当社が提供しているオーラルヘルスケア関連の製品や新しいサービスを紹介する時に「歯をきちんと磨くと、こんな良いことがあるんですよ」というエビデンスをしっかり出していきたいという思いがあります。
最終的にはそうしたエビデンスをもとに行政も巻き込んで、より広く展開していけたらと考えています。

実際に私が健診レセプトデータで行った分析の一例として、昨年、学会で発表したものがあります。これは歯科健診に行っている人と行っていない人とで、生活習慣病に関わる医療費にどれだけ差があるのかを見たものです。
結果としては、歯科健診を受けている人のほうが、生活習慣病に対する医療費が少なく済んでいるという傾向がみられました。
歯科健診をきっかけにオーラルケアが全身の健康にも良い影響を与える可能性がある、という関連性が今まで以上に見えてくれば、より説得力を持たせられるのではないかと思い、日々分析をしています。

−ありがとうございます。御社が保有されている健診データやレセプトデータはどの程度の規模になるのでしょうか。
村上さん: データの種別によって差はあるので一概には言えないのですが、ライオン本体の被験者数でいうとだいたい4,000人ぐらいで、それが約20年分蓄積されています。

 

−病院からデータを購入するというのではなく、御社の社員データを蓄積されているという理解で合っていますか?
村上さん: そうですね。当社の健康管理部門が保有している通常の健康診断データと、独自の歯科健診データがあります。それに加えて、ライオン健康保険組合が管理しているレセプトデータを突合して、さまざまな分析を行っています。

昨年からは別の企業のデータも受領して、分析を始めているところです。
当社のデータよりもはるかに大きな規模のデータを使わせていただきました。その成果はつい先日、学会で発表し6月にプレスリリースをしていますので、ぜひご覧ください。

 

ライオンが日本 IBM 健保の 2 万人の歯科健診・健康診断・レセプトデータを解析

 

−入社前に想像していた仕事と、実際に入ってからの仕事内容にギャップはありましたか?
村上さん: 入社直後は生物系の研究所に配属されて研究員として働いており、わからないことだらけでした。
ただ、自分の専攻がタンパク質の分析だったので、生物系とのつながりはある程度あり、大きなギャップはなかったと感じています。
当時は、今のようにデータ分析を主導するような仕事をすることになるなんて、まったく想像していなかったですね。統計の知識もほとんど勉強していなかったです。

 

−現在在籍されているデジタル戦略部 データサイエンスグループについて教えてください。
村上さん: 私たちのグループは全社横断の組織になっていて、それぞれ違うテーマに取り組んでいます。需要予測に取り組んでいる人もいれば、データマネジメントの分野でリーダーシップを発揮している人もいますし、AIやアプリの内製開発に関わっているエンジニアリング寄りのメンバーもいます。

私自身も以前はAWSを使った開発を担当していたのですが、今はひと区切りついたので、前述の通り現在は健診レセプトデータとデータマネジメントの2つが主な担当領域になっています。
最近はキャリア入社の方も多く、経歴が多岐に渡っており、日々刺激を受けながら仕事に取り組んでいます。

 

−働き方はリモートワークが中心ですか?
村上さん: はい。コロナをきっかけに一気に進みましたね。2023年にはオフィスが移転し、オフィス環境も大変よくなりテレワークと出社を状況に合わせて選んで働いています。

 

−会社から出社の指示やルールなどはありますか?
村上さん: 特にこれといったルールや縛りはありません。
対面の打ち合わせが発生したときには出社しています。あとは懇親会の日もですね(笑)。私の場合、自宅から蔵前のオフィスまで片道1時間ほどかかるのと、最近子どもが生まれたこともあって、在宅の比率を少し高めにしています。

※ライオン株式会社の採用情報を確認する

https://www.lion.co.jp/ja/recruit/career/

取材日:2025年5月29日

インタビュー:

データサイエンティスト協会 企画委員会

株式会社分析屋 池田

 

ライター:

株式会社BICP DATA 山田

株式会社Hi-Lights 清水

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