2023.05.12

Data of Data Scientist シリーズ vol.40『47%-ビジネス力を高めるためにOff-JTに取り組んでいる割合』

データサイエンティスト協会では、一般(個人)会員向けのショートリサーチを定期的に実施しています。今回はデータサイエンティストの能力開発、とりわけ「ビジネス力」のスキルアップを切り口に調査しました。調査結果から読み取れる特徴について考察します。

当協会では、データサイエンティストに必要なスキルセットとして「ビジネス力」「データサイエンス力」「データエンジニアリング力」の3つを定義しています。このうち「ビジネス力」は、「課題背景を理解した上で、ビジネス課題を整理し、解決する力」と定義され、ビジネスマインド、論理思考といった基礎能力に加え、他2つのスキルセットと掛け合わせて、課題定義、分析のアプローチ設計から事業への実装に至るまで、ビジネス課題解決のために必要となる能力です。
では、データサイエンティストは「ビジネス力」をどうやって強化しているのでしょうか。今回の調査では、「ビジネス力」を高めるための取り組みとして、以下2つの観点に分けて一般(個人)会員の取り組み状況を調査しました。

 

OJT:「On-the-Job Training」の略で、現場での実践的な職務経験を通じてスキルや知識を身につけること。
Off-JT:「Off-the-Job Training」の略で、通常の仕事から離れた場所で行われる研修などでスキルや知識を身につけること。

 

「ビジネス力」を高めるための何らかの取り組みを行っている人のうち、「OJTのみ」に取り組んでいる割合は53%、「Off-JTのみ」に取り組んでいる割合が26%、「OJTとOff-JT両方」に取り組んでいる割合が21%という結果でした。「ビジネス力」がOJTによって鍛えられることは自明ですが、Off-JTを活用している割合も合計で47%と、意外にも多いことに気づきます。

「ビジネス力」強化のための取り組み

OJTとOff-JTそれぞれの取り組み内容を見ていきましょう。まずOJTの取り組みとしては、「顧客との会話、社外提案」(66%)が最も多く、次いで「メンバーとしての実務経験」(60%)、「リーダーとしての実務経験」(55%)という結果でした。

OJTの取り組み

「顧客との会話、社外提案」に関して、自由記述では「顧客への提案を通じ、現場の温度感や課題感を肌で感じることで、技術ありきの視点から現場ありき、課題ありきの視点に切り替えることができた。(20代男性)」、「異なる観点を持つ事業担当者、顧客と直接議論をする経験を通じて何がわかれば意思決定ができるか、のポイントを自ら繰り返し確認することで解析と提案の精度が向上したと思う。(50代男性)」などのコメントがありました。やはり社内に留まらず、顧客・社外関係者との対話と協働を通じて、ビジネス力は高まるようです。
また、「メンバー/リーダーとしての実務経験」に関して、自由記述では「社内データの分析を行い、分析結果について事業部と協議し、事業部で新たなデータを取得し...、というサイクルを繰り返す中で、徐々に事業に対する理解が深まり、結果的にビジネス力が高まっていると思う。(20代女性)」、「プロジェクトマネジメントを実践したとき、メンバーを育成指導したとき。(30代男性)」、「実務経験での失敗を通じて、徐々にうまく行かないパターンの蓄積から、コツがつかめてきたような気がします。(40代男性)」などの体験談がありました。このように、実務経験の年数もビジネス力に影響するでしょう。リーダーとしての実務経験も、プロジェクトマネジメントや組織マネジメント領域のスキル強化に直結していると考えられます。

 

では、Off-JTはどうでしょうか。最も多かった取り組み内容は「研修・勉強会・セミナーの受講」(66%)、次いで「専門的な書籍での学習」(62%)でした。

Off-JTの取り組み

「ビジネス力」向上に効果的な研修・セミナーにはどのようなものがあるのでしょうか。その具体例として自由記述では、当協会主催の「課題解決型人材コンテスト」への参加や、経済産業省が立ち上げたデジタル推進人材育成プログラムである「マナビDX Quest」、Kaggleなどのデータ分析コンペへの参加などが挙がりました。これらはどれもビジネスの現場における課題解決の実践を想定したOff-JTといえるでしょう。個人だけで取り組むものではなく、チームを組んだりコミュニティを作ったりしながら進めるという共通点も興味深いです。

 

「専門的な書籍での学習」では、「ビジネスの事例について書籍を通じて学ぶことにより、他の事例へ知識の展開ができた。(50代男性)」、「自社の属する業界についての書籍や雑誌、ウェブ記事などに日常的に触れている。(40代男性)」、「業務にかかわる本を入手して、読み込みする。まず、図書館で1回読んで、優れた本はAmazonで購入して何度も読み返す。(50代男性)」など体験談や学習方法に関するコメントがありました。

 

今回はビジネス力強化のための取り組み状況に加え、ビジネス力が高まったと感じる具体的な事例や体験談などリアルな声も紹介しました。OJTとOff-JTのどちらの方法を選ぶにせよ、私たち自身が目的を理解し、スキルアップする意欲を持って取り組むことが重要です。また、OJTとOff-JTを組み合わせることは、能力開発の有効な方法のひとつです。上述の調査結果では、「OJTとOff-JT両方」に取り組んでいる割合は21%にとどまりました。OJTとOff-JTそれぞれの特徴を押さえた上で、目的に応じた最適な組み合わせを考えてみましょう。データサイエンティストを抱える企業としては、両者のベストミックスを検討しつつ育成体系を設計し、育成プログラムを整備していくことが求められます。

 

データサイエンティスト協会 調査・研究委員会
株式会社日立アカデミー 市塲大夢

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