2026.05.27

【イマドキのデータサイエンティストに迫るvol.8 後編】

データサイエンティストの業務内容や働き方の実情を、多くの人に正しく知ってもらいたいと考え、企画を始めたインタビューシリーズ。

 

第八弾の後編は、引き続き日本航空株式会社のマーケティング戦略部 顧客データ戦略室でデータサイエンティストをされている、森口 翼さんにお話を伺います。

 

日本航空株式会社 森口 翼(モリグチ ツバサ)氏
26歳 新卒入社
マーケティング戦略部 顧客データ戦略室
データサイエンティスト歴:4

<前編のインタビューはこちらをご覧ください>

―AI技術の進化が著しいですが、業務においてどのような変化を感じていますか?

森口さん: 私は昨年からデータサイエンティスト協会のスキル定義委員に参画しており、昨年のシンポジウム登壇でも申し上げたのですが、AIやデジタル化によって「正しい答えが返ってくる」時代になってきたと感じています。

その結果、データサイエンスの役割は問題解決から、バリュークリエイト(価値創造)=正しい問いを作る側に移ってきています。「今問おうとしている課題は本当に正しいのか」「意思決定プロセスそのものを変えるような問題設定になっているのか」という点が、より重要になってきます。

 

―今後のキャリア像や挑戦してみたいことがあれば教えてください。

森口さん: 正直ぱっとは答えにくいです。やりたかったことはある程度やってきていますし、あえてキャリア像を固定しない方が良いと判断しています。今できることを全力でやる。それが自分のスタンスです。

ただ自分の中のミッションとしては、JALをデータドリブンカンパニーにするという目標があります。社長が「JALのブランド力やホスピタリティに匹敵するくらい、データサイエンスが魅力なのです」と言えるような状態が実現すれば、JAL以外の他の日本企業にも良い影響が起こせるのではないか、と考え、目の前の課題解決に取り組んでいます。

 

―社内チームの人間関係についてどのように感じていますか。

森口さん: 今の部署は、部署単体ではコントロールできない仕事が多いです。意思決定者はビジネス部門にいます。マイレージにいた時は自分が意思決定側でしたが、今は推進側ですので意思決定者としっかりコミュニケーションを取る必要があります。

彼らは非常に忙しい中で時間を取ってくれているので、以前より準備をするようになりました。データを説明するだけでなく、相手の意見を聞き、ニーズを捉えてコミュニケーションを取ることが重要です。

ただJALは基本的に良い方が多く、人間関係が悪くてプロジェクトが進まないという経験は今のところありません。

 

―業務外での社内交流はありますか。

森口さん: はい、あります。マイレージにいた期間も3年ほどあったので当時のメンバーとはよく会っています。今週もチームのメンバーでサッカーをしに行く予定です。

 

―JAL独特の文化や環境面について教えてください。

森口さん: JALの方は旅好きが多いです。私も昨年は十か国以上行きましたが、仕事をしながら旅をしやすい環境は面白い文化です。

 

―入社後、向上したスキルと現時点での不足や課題はありますか。

森口さん: 習得できたスキルも不足しているスキルも同じで、「問いを作る力」だと思います。

学生のうちは問題が与えられ、それを解いて評価されますが、社会に出ると自分で問題を設定しなければならず、そこに難しさを感じることが増えました。

鍛えられてきた一方で、まだまだ不足していると感じます。

取得した資格としてはデータサイエンス検定。大学時代に統計検定も取得していましたが、クラウド系の知識が弱みだと感じていたので、AWSのクラウドプラクティショナー(Cloud Practitioner)も取得しました。

また昨年は、会社のプログラムでハーバードのLEAP Innovationプログラムに参加し、修了証も取得しました。イノベーションのマインドセットやフレームワークを学ぶ内容でした。

さらにTOEICも受けるなどしています。私のモットーとして「学びを仕事のギアにする」があるので、学びを業務に活かせるようにしていきたいと思っています。

 

―社内の研修や制度について教えてください。

森口さん: 私は制度を使い倒してさまざまな経験をさせて頂きました。

先ほどのアプリを起案したビジネスオーディションも制度ですし、シリコンバレーに行って起業家の方々と交流するプログラム、ハーバードのプログラムなどもあります。

また、キャリアチャレンジ(社内人財公募制度)があり、今回私が顧客データ戦略室に来たのもその制度を使いました。ポストに対して自身から応募しに行く形で、キャリア形成に活用できる制度です。

 

―お話を聞くと、とても忙しそうなのですが森口さんはいつ勉強やキャッチアップをされているのですか?

森口さん: 仕事をしながら学びに行く、ということもありますし、データサイエンティスト協会の活動も大きいです。

近くで学べる環境に身を置くことで自分のOSをアップデートできる感覚があります。日常的に学びが多いです。

 

―現在の会社に入って良かった点と、ギャップを感じた点があれば教えてください。

森口さん: 良かった点は、多様性と専門性のある仲間と一緒に働けることです。

もう一つは自分が提案したサービスが世に出て、お客さまから「ありがとう」と言っていただけること。

身近な人がそれを使って「面白いね」「いいね」と言ってくれた瞬間は、JALという看板を背負って仕事をしている実感があり、嬉しいです。

ギャップとしては、意思決定につなげる難しさです。仕事を進める上では「正しいことがすべて」ではなく、納得していただいて初めて進む、という面があります。

「正解」よりも「納得解」が使われる世界もあり得ます。だからこそ都合の良い数字づくりをしないよう、自分に言い聞かせながら取り組んでいます。

 

―好奇心の原動力は何でしょうか。また、怖いと思うことはないのでしょうか。

森口さん: 好奇心の原動力は価値観のアップデートです。新しい価値観に触れたり、自分とは異なる立場の方々と話すときにワクワクする。そのワクワクが原動力です。怖いことについては「致命的なリスク」はあまり取らないようにしています。

例えばシリコンバレーでの経験が良かったからといって、いきなりすべてを捨てて移住して起業するというような選択はしません。

 

―これから就職・転職活動をされる方、特にデータサイエンティストを目指す方へ会社選びのアドバイスをお願いします。

森口さん: まずは自己分析を最優先にするのが良いと思います。企業に合わせた就活、つまり就職をゴールにしてしまうと、入社後に非常に苦しくなります。

例えば「JALに入りたい」と思って、JALが求める人物像に合わせて仮の自分を作って入社したとしても、入社後に本当にやりたいことがそこになければ、言われたことをこなすだけ、怒られないために働く、という状態になりかねません。それを何十年も続けるのか、という話です。

「企業のアセットを活用して自分のやりたいことを実現する」という考え方の方が、入社後のスタートがうまく切れます。自分は何に興味があるのか、何ができるのか、何がしたいのか。そこをしっかり分析することが大切です。

 

―どのような人がデータサイエンティストに向いていると思われますか。

森口さん: データサイエンスの魅力は、業界や専門性が違う方々とも共通項を持てるところです。したがって、多様性に対する好奇心が旺盛な人は楽しい職種です。

また、何がやりたいかが決まっていない人にも、むしろおすすめですね。22歳や24歳のタイミングで人生でやりたいことを決めるのは難しい。データサイエンティストになることで選択肢が増え、社会を知ってからやりたいことが出てくる可能性もあります。そういう意味でもおすすめです。

 

―部署内のデータサイエンティストの方々は、どのようなキャリアや学問背景の方が多いですか。

森口さん: 理系の方が多く、情報学部や理工学部出身の方が多い印象です。

面白いのは、私が入社して以降、母校である滋賀大学から毎年のようにJALへ入社する後輩が出ており、同じゼミの後輩も2名います。

中途の方で他業界で分析されていた方もいますし、新卒でデータサイエンスをこれからキャッチアップするという方もいます。多様な方がいるのが特徴ですね。

 

―現在の仕事の満足度を、100点満点で教えてください。プラス面と、マイナス面もあればお願いします。

森口さん: 一番迷った質問でしたが、80点くらいだと思います。ある程度達成感はある一方で、まだまだポテンシャルがあると感じているからです。

昨年であれば90点と言っていたかもしれませんが、今年は部署も変わり協会活動も含めて「本当に優れた方がたくさんいる」と分かりました。自分の伸びしろはまだ大きいと感じています。とはいえ自己肯定感も大切なので、ひとまず80点にしました。

 

―これからデータサイエンティストを目指す方々に向けて、メッセージをお願いします。

森口さん: 私がこういう場でよくお伝えするのは、「データサイエンティストは楽しい仕事です」ということです。何が楽しいかというと、いろいろな仲間ができることです。海外に行ったときも、英語よりデータサイエンスの話の方が共通言語になりました。以前フランスに出張した際、相手の方がフランス語しか話せなかったのですが、統計手法である「Bayesian」の話で盛り上がったことがありました。

データサイエンスは、英語以上に世界の共通言語なのかもしれません。ぜひ仲間づくりをしながら、喜びも苦しみも分かち合い、楽しく働いていただければ幸いです。ぜひ一緒に働きましょう。

取材日:2026年1月29日

インタビュー:

データサイエンティスト協会 企画委員会

株式会社分析屋 池田

 

ライター:

株式会社BICP DATA 山田

株式会社Hi-Lights 清水

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