2025.12.16

Data of Data Scientist シリーズ vol.77『22%-データ分析業務に至るまでのパス:「社内の部署異動(他職種から)」「他職種からの転職」』

データサイエンティスト協会では、一般(個人)会員向けのアンケートを毎年実施しています。本記事では2024年度調査で新たに調査項目に加わったデータ分析業務に従事するまでのキャリアパスについて詳しくみていきます。

 

2024年 一般(個人)会員向けアンケート:https://speakerdeck.com/datascientistsociety/person_research2024

 

データサイエンティストという職種は、近年存在感を高めていますが、そのバックグラウンドは非常に多様です。統計学や情報工学の専攻者だけでなく、マーケティング、営業、研究、システム開発など、さまざまな領域からこの職に辿り着く人がいます。専門性が求められる一方で、業務知識やコミュニケーション能力など幅広いスキルが重視されるため、分析業務に至るまでのキャリアパスも実に多様であるという点が特徴です。
今回実施した調査結果から、データ分析業務に就く人がどのような経路を経て現職に至ったのかを詳しく見てみることにします。データサイエンス人材が企業内でどこから集まり、どのように育成され、どのようなキャリアの流れを辿っているのか――その実態を明らかにすることで、今後の人材戦略や育成の方向性についても示唆を得ることが期待できます。
以下では、調査結果をもとに、データサイエンティストのキャリアパスの特徴と背景、さらに分析従事期間との関係性について深く考察していきます。

今回のアンケートにおいて、「あなたはどのような経歴を経て、データ分析・解析業務に従事するようになりましたか?」という設問に対する回答では、「社内の部署移動(その他の職種から)」「他職種からの転職」がそれぞれ最も多い22%という結果になりました。この数字は、データ分析業務が専門領域としての採用だけでなく、企業内の再配置やキャリア転換の重要な受け皿となっている現状を示唆しています。

社内異動の場合、もともとの業務ドメインの知識を持つ人材を分析業務に配置することで、分析結果を業務へ実装しやすくなる利点があります。分析業務の即戦力人材を外部から獲得することは難しく、育成にも時間とコストがかかるため、既存社員を分析部門に送り込む動きが広がったことが考えられます。

また、他職種からの転職については、データ分析が 「第二キャリア」や「専門職への転向先」 として認識されるようになったことが背景にあると考えられます。

 

次に多かった経路として、「社内の部署異動(技術・研究職から)(17%)」、続いて「新卒での配属(15%)」、「社内の部署異動(エンジニアから)(12%)」が挙げられます。これらの選択肢が比較的高い割合である理由として、データ分析業務とスキルの親和性の高さが考えられます。

技術・研究職はデータ処理や分析に必要な素養である数学、統計、プログラミングに一定の下地があることが多く、分析業務への移行がスムーズです。また、企業側から見ても育成コストが比較的低いため、技術職からの異動が自然と増えます。

SE職からの異動が12%と一定数存在するのは、データ分析とデータ基盤構築が密接に結びついており、システム領域とデータ領域の境界が曖昧になっていることが影響していると考えられます。SEとして培ったシステム理解や実装経験が、データ分析業務に活かされる場面は増えており、企業内で安定したキャリアパスとなりつつあります。データサイエンティストにもとめられるスキルセットは多様であるため、データ分析基盤に強い人材(エンジニアから)・アルゴリズム構築に強い人材(技術・研究職から)・事業開発に強い人材(営業職から)のように各自のバックグラウンドにもとづく強みを生かしながら、チームとしてよいパフォーマンスを出す仕組みが期待できます。また新卒配属の割合が15%と比較的高いことは、大学教育におけるデータサイエンス系カリキュラムが拡充したことが影響していると考えられます。ただし、専門教育を受けた学生の絶対数はまだ十分とは言えず、依然として企業は社内人材の配置転換に依存する傾向が続いているといえます。

今回の調査では、経路だけでなく「分析従事期間」との関係にも興味深い特徴が見られました。

 

分析業務従事期間ごとのキャリアパスの構成比を確認すると、期間の長さによって経路が大きく異なることがわかります。まず、分析業務従事期間が3年未満の短期層では「新卒配属」と「社内異動(その他職種)」が特に多く、両者で半数以上を占めています。近年の新卒データサイエンティスト採用の増加に加え、企業内でのリスキリング施策や部門横断的な人材配置が進んだことで、直近数年に分析部門へ流入した人材が急増していることが背景にあると考えられます。
一方、分析業務従事期間3〜5年未満/5~10年未満の中期層では「技術・研究職からの異動」が比較的高い割合を占めており、専門的な知識を持つ中堅層が組織の中核を担う構造が見て取れます。分析実務に一定期間携わることで、この層が最も手を動かし、実務の中心を担うケースが多いと推測されます。また、企業側も技術やバックグラウンドを持つ人材を分析領域で重用する傾向が強く、中期層の構成比に反映されていると考えられます。

さらに、分析業務従事期間10年以上の長期層では「他職種からの転職」が最も多く、31%に達しています。これは、ビッグデータ活用が普及し始めた2010年前後にキャリアの転換期を迎えた中堅層が、専門領域として分析職へ移ったケースが中心であり、企業側も経験豊富な即戦力人材を積極的に採用してきた歴史を反映しています。また、新卒配属の長期層が一定割合存在している点からは、黎明期から分析業務に関わり続けてきた人材が、現在もベテラン層として組織を支えていることが読み取れます。

このように、分析従事期間によって主要なキャリアパスは大きく異なっており、これまでのAIビジネスの進展や近年の組織変化・採用動向・リスキリング施策の影響が色濃く表れています。

今回の調査結果から、データサイエンティストが分析業務に至るまでのキャリアパスは、時代背景や企業の人材戦略の変化を反映しながら、様々な経路があることが明らかになりました。近年は新卒配属や社内リスキリングによる流入が増え、短期間で分析業務に従事する人材が急速に厚みを増しています。一方で、分析経験3〜10年の中期層では技術・研究系職種からの異動が中心となり、専門的な素養を持つ人材が実務の中核を支えていることが確認できました。さらに、10年以上の長期層では他職種からの転職者が多く、AI・ビッグデータ活用の黎明期にキャリアをシフトした中堅・ベテラン層が現在も組織を牽引していることがわかりました。こうした構造は、データ分析業務が単なる専門職ではなく、企業内の人材育成、キャリア形成、デジタル戦略と密接に関わっていることが影響していると考えられます。新卒・異動・転職といった多様な経路から人材が集まり、時期に応じて構成が大きく変化している点は、データ活用が企業の全体戦略に浸透した現在ならではの特徴と言えます。また、バックグラウンドの異なる人材が相互補完的に役割を果たしていることは、組織としてのデータ活用力を高めるうえでも重要な要素です。

 

データ活用があらゆる領域に拡大し続ける中で、企業はどのように人材を獲得し、育成し、適切に配置していくのかを引き続き考えていく必要があります。本調査は、データサイエンティストという職種がどのように形成され、どのようなキャリアパスで育っていくのかを理解するうえで、非常に重要な示唆を与えるものとなりました。今後の人材戦略や組織づくりを検討する際に、今回の結果がその一助となることを期待します。

データサイエンティスト協会 調査・研究委員会
日本電気株式会社 齊藤敦美氏

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